白と黒のおはなし

白と黒とが出会った


黒は恐ろしい仮面を脱いだ


白と同じ、人物だった




２人は和解を試みた

両手を広げ、歩み寄る

白はその粒子とともに

黒はその粒子とともに



彼らはお互いを通り抜け

背中合わせで逆の方向に歩いた



また、一人となった



彼らが背負った粒子たちは

混ざり合い、灰色となって、空間を占めた



黒はがっくりとひざをつくと

全身全霊で、うなだれた

白は、立ち続けてはいたが

やがてもがき苦しみ、全身を痙攣させた



２人は、ただ、苦しんだ

しかし、灰色があるだけだった

やがて、苦しむことにもつかれ

気がつけば、２人は隣りあって横たわっていた



苦しみの音さえない、静寂

それは戦いにつかれた戦士の永遠の休息

もがきくるしむことにつかれた人間が行き着いた悟り



灰色は　横たわるものを　灰色で染めた


ほかには　なにも　なかった




気がつくと、そこは海辺だった

鮮やかな太陽が世界を照らし出し、

海、空、砂、存在するものすべてを輝かせた



白いＴシャツ、黒い短パンを着た人間が立った

黒いＴシャツ、白い短パンを着た人間も立った

２人は向き合って、一瞬のうちに同意し、

次の瞬間、急いで服を脱いだ


裸の人間が、２人

向かいあって、立っていた



もとの姿へと、もどることにしたのだ




２人は肩を組み　言葉を交わし

はしゃぎあって　水をかけ合い

笑いながら　遊びながら

故郷である　海へと帰った




海辺は歓喜に満ちており

太陽が、その水面をきらきらと輝かせた

美しく繊細にカットされたダイヤモンドのように

あたり一面が、喜びの輝きを織りなしていた




２人の声は消え、浜辺に静寂が訪れた

ただ、見るものすべてが、光であふれていた

生命が、その力を取り戻したかのように

ただ、光り輝いていた